意外と知らないハザードマップの正しい見方と注意点

ハザードマップの正しい見方と注意点

どこでどんな災害が起きるのか?災害が迫った時にどこに避難すればいいのか?気になった時に役に立つハザードマップですが、簡単に理解できそうに見えて、実際には注意しなければいけない点がたくさんあります。この記事では、ハザードマップの正しい見方を解説します。

 ハザードマップには種類がたくさんある

ハザードマップを見る時に最も気をつけなければいけないのは、掲載されている災害の種類です。

 

ほとんどの自治体のハザードマップは洪水、津波、土砂災害などの災害別に作られているため、間違って他の災害のハザードマップを見て行動してしまうと命の危険にさらされる可能性があります。

愛知県名古屋市の例

例えば、愛知県名古屋市では「地震」「津波」「洪水・内水氾濫」という3つのハザードマップが存在しています。これから紹介する3つの地図を見ていただければ分かりますが、危険だとされている場所が全く違います。

地震ハザードマップ

名古屋市地震ハザードマップ

名古屋市「港区の地震ハザードマップ」より

これは地震の揺れと液状化に関するハザードマップです。予想される震度と、液状化の危険度を知ることができますが、その後に襲ってくる津波でどんな被害が出るかをこの地図から知ることはできません。

津波ハザードマップ

名古屋市津波ハザードマップ

名古屋市「港区の津波ハザードマップ」より

これは津波のハザードマップです。どれくらい浸水するかと浸水がどれくらい継続するかを知ることができます。ただ、ここで重要なのが、このハザードマップは“津波”のハザードマップであって、河川の氾濫のハザードマップではないという点です。大雨災害の時は、また別のハザードマップを見る必要があります。

洪水・内水ハザードマップ

名古屋市洪水ハザードマップ

名古屋市「港区の洪水・内水ハザードマップ」より

大雨の時に見るハザードマップは“洪水”のハザードマップです。大雨で大河川が氾濫したり、排水が追いつかなくなって発生する内水氾濫で、どのくらい浸水するかを知ることができます。洪水ハザードマップは見た目が津波ハザードマップと似ているため、間違えないように注意する必要があります。

 

このようにハザードマップには様々な種類があります。大雨の時に間違って「津波ハザードマップ」を見てしまったり、津波から避難する時に間違って「洪水ハザードマップ」を見てしまうことが内容に、はじめにどの災害のハザードマップかを確認するようにしてください。

 

ハザードマップを探したい方は、こちらの記事を参考にしてください。

» ハザードマップを簡単に見つける方法

各ハザードマップの正しい見方

ここからは、ハザードマップの正しい見方を災害別に紹介していきます。(ここでは掲載している画像を例に紹介していきますが、各自治体によって多少の違いがあります。)

地震ハザードマップ

名古屋市ハザードマップ

名古屋市「中区の地震ハザードマップ」より

地震のハザードマップとは、震度想定や液状化の危険度、それに避難場所や避難所の場所を知るための地図です。避難場所は火災などから緊急に避難する広い公園など、避難所は家に住めなくなった人が長期間滞在するための施設(学校など)のことです。また、自治体によっては給水の場所も表示してありますので、是非活用してください。

 

避難場所や避難所の位置は正確に描かれていますが、震度分布や液状化の危険度は正確とは限りません。地下の構造を完全に把握することは不可能なため、多少の誤差が含まれている可能性があります。「自分の地域はギリギリ安全」というような見方をするのではなく、大まかな傾向として見るようにしてください。

 

また、特に震度想定は既に見つかっている活断層などで発生する地震を想定していることがほとんどなので、未知の活断層で地震が発生すれば、ハザードマップに載っている震度よりも大きな揺れに襲われる可能性があります。真下でマグニチュード7程度の地震が発生すれば、どこでも震度7の激しい揺れに襲われる可能性があります。

津波ハザードマップ

大阪市ハザードマップ

大阪市「水害ハザードマップ(北区)」より

津波ハザードマップは、津波の浸水想定域と津波避難場所を知ることができる地図です。大抵の場合、津波の浸水想定域はあらゆる可能性を考慮した最悪クラスですが、自治体によっては、最悪クラスとひと回り小さい発生頻度の高い津波の想定も載せいているところもあるので注意してください。

 

津波の浸水想定域も先ほどの地震ハザードマップと同じく多少の誤差が含まれている可能性があります。ある地点の浸水の高さを正確に表している地図ではなく、あくまでシミュレーションですので、実際にはより高い場所まで浸水する可能性もあります。

洪水ハザードマップ

札幌市ハザードマップ

札幌市「洪水ハザードマップ」より

洪水ハザードマップは、河川が氾濫した時にどこまで浸水するか、どこに避難すればいいかを知ることができる地図です。洪水ハザードマップは津波のハザードマップとは違い、河川ごとの想定を重ね合わせた地図のため、まだ浸水想定が公表されていない河川は想定に含まれていません。特に中小河川の氾濫は含まれていないことが多いため「色がついていない場所が安全」という意味ではないことに注意が必要です。

 

地震や津波のハザードマップと同じく、洪水ハザードマップにも多少の誤差が含まれている可能性があります。あくまで広い視野で、大まかな傾向として見るようにしてください。また、雨量が想定を超えた場合は浸水範囲がさらに広くなります。

土砂災害ハザードマップ

新宿区ハザードマップ

新宿区「土砂災害ハザードマップ」より

土砂災害ハザードマップは、大雨や地震などの際にどこで土砂災害が発生する危険が高いかを知ることができる地図です。自治体によって色が異な流ケースもありますが、主に黄色で表記されている「土砂災害警戒区域」は住民の命や身体に危害が生じる恐れがある地域で、赤色で表記されている「土砂災害特別警戒区域」は住民の命や身体に著しい危害が生じる恐れがある地域です。

 

ただ、土砂災害は警戒区域や特別警戒区域に設定されていない場所で発生するケースも確認されているため、「警戒区域に含まれていないから」と安心せずに、大雨の際には斜面から離れた場所に避難してください。 

高潮ハザードマップ

江戸川区ハザードマップ

江戸川区「水害ハザードマップ」より

高潮ハザードマップは、台風などの際に高潮によって浸水するエリアやどこに避難すればいいのかを知ることができる地図です。自治体によっては避難場所や避難所が別のページに掲載されているものもあります。高潮のハザードマップも洪水や津波のハザードマップと同様に誤差が含まれていることを前提に広い視野で見るようにしてください。

 

高潮のハザードマップは、まだ一部の自治体でしか作成されていませんが、「ハザードマップがないから安全」という訳ではありません。沿岸部であればどこでも高潮のリスクはあります。

 ハザードマップは完璧ではない

ここまでハザードマップの見方と注意点を紹介してきましたが、 ハザードマップはあくまで一つの想定であり、地震の規模や雨量が想定を超えた場合にはハザードマップで色がついていない場所でも命の危険にさらされる可能性があります。

 

2011年3月11日の東日本大震災では岩手県釜石市の鵜住居地区でハザードマップで浸水が想定されていた場所と浸水が想定されていなかった場所を境に犠牲者が急増していました。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

» ハザードマップを信じてはいけない!?東日本大震災からの教訓

 

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