2011年3月11日午後2時46分、東北地方から茨城県の沖合までを震源域とするマグニチュード9.0の超巨大地震、「東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)」が発生しました。この時、震源から離れた東京や大阪でゆったりとした長い揺れがあったことを覚えているでしょうか?
まるで船に揺られるようなゆったりとした揺れ、これが長周期地震動です。
ではなぜこのような揺れが発生するのでしょうか?そして南海トラフ巨大地震など今後の地震によっても発生する可能性はあるのでしょうか?
出典:気象庁
長周期地震動の映像
こちらは2011年3月11日に東京都内で撮影された映像です。(地震の揺れの映像です。ストレスを感じた場合は直ちに視聴を中止してください。)
ゆったりとした揺れが長時間続いていることがわかります。この時都内のビルでは揺れ幅が1mを超え、大きな揺れは10分以上続きました。長周期地震動をこれほど明確に捉えたのはこの映像が初めてです。
長周期地震動は普通の震度では測れない
長周期地震動は人はそれほど強い揺れには感じません。しかし、建物は大きく揺さぶられ、場合によってはビルがねじれるように揺れることもあるため、建物への被害は甚大なものになります。 東北地方太平洋沖地震では震度3だった大阪のビルでも壁が剥がれ落ちるなどの被害が出ました。
そこで、気象庁は今まで発表してきた震度とは別に「長周期地震動階級」と呼ばれる情報を2013年から発表しています。この長周期地震動階級は4段階あります。
長周期地震動階級1
室内にいる人のほとんどが揺れを感じ、ブラインドなどの吊り下げものが大きく揺れる。
長周期地震動階級2
ものに掴まらないと歩くことが難しくなる。キャスターのついた置物がわずかに動き、食器や本が落下することがある。
長周期地震動階級3
立っていることが困難になる。キャスターのついた棚は大きく動き、不安定なものは倒れるものもある。壁にヒビが入ることもある。
長周期地震動階級4
揺れに翻弄され、這わないと動くことができない。キャスターのついた棚が大きく動き倒れるものもある。固定していない家具の大半が移動し、倒れるものもある。
長周期地震動が発生する条件
地震の規模
一般に、地震の規模が大きくなるほど発生する揺れも大きくなります。しかし、地震の規模が大きくなると、長周期の揺れが占める割合が多くなります。特に浅い場所で巨大地震が発生した場合に発生しやすいとされています。
伝わりやすい地層
発生した長周期の揺れは地盤が柔らかい地域を進んで行きます。この柔らかい地層は稀に、揺れを大きくすることもあります。
揺れやすい地盤
関東平野や、濃尾平野、大阪平野のように柔らかい地盤でできている地域では、ほぼ減衰せずに伝わってきた長周期の揺れが増幅されます。その結果、建物を大きくゆくっり揺らす「長周期地震動」となるのです。
南海トラフ巨大地震でも発生する
長周期地震動が発生する条件をお伝えしましたが、この全ての条件が“完璧”に揃っているのが「南海トラフ巨大地震」です。浅い場所でマグニチュード8〜9クラスの巨大地震が発生し、南海トラフから陸側の地表付近には長周期の揺れが伝わりやすい柔らかい地層があります。そして、名古屋や大阪はもともと地盤が柔らかい平野に位置します。名古屋や大阪、それに東京では長周期地震動が発生する可能性が極めて高いと考えられています。
まとめ
発表された震度が思っていたよりも小さい、という時にはこの長周期地震動を思い出してみてください。また近年ではこの長周期地震動は規模の大きな海溝型地震だけでなく、直下型地震でも発生することがわかってきました。実際に熊本地震では長周期地震動階級4が観測されています。今一度、家具が固定されているか、建物の耐震性は十分か確認してみてはいかがでしょうか?