「暴風警報が発表されているから今日は学校休み」「暴風警報が発表されていないから雨は強いけど学校はある」という経験があると思います。しかし、なぜ暴風警報だけが判断の目安になっていて大雨警報は考慮されていないのでしょうか?(最近では大雨警報で休みになる学校も増えてきましたが、まだ少数派なのが現状です。)
一般的な休校基準
日本のほとんどの学校は暴風警報が発表されると休みになります。「◯時の時点で暴風警報が発表されていたら午前中は休み」というような判断をしている学校が多いでしょう。一部の学校では大雨警報で休校になるところ、暴風警報が発表されていなくても学校がその都度判断して休校にしているところもありますが、ほとんどの学校は暴風警報のみを基準に機械的に判断しています。
大雨警報は暴風警報よりも安全なのか?
なぜ暴風警報で休みになるのに大雨警報では休みにならないのでしょうか?
気象庁は大雨警報も暴風警報も同じ危険度に位置付けています。両方とも「重大な災害が発生するおそれ」がある時に発表されます。決して暴風警報が大雨警報よりも危険な状況を示しているわけではないのです。大雨警報しか発表されていない状況で災害が発生することも珍しくありません。
暴風警報では休みになるのに大雨警報では休みにならない明確な理由は無いのです。
また、「平地では大雨による災害は起きにくい」と考えている方もいるかもしれませんが、そのようなことは全くありません。
周りに比べて少しでも低い場所は短時間で冠水し、アンダーパスなどでは死亡事故も繰り返し発生しています。
小さな川は、数分で一気に水位が増し、警戒を呼びかける暇もなく溢れます。
少しの坂道であっても川のようになり、足を踏み入れると濁流に押し流されます。
完全に平な場所であっても、道路と排水溝や用水路との境目が分からなくなり、転落して死亡する事故が多発しています。
このように、都市部であっても大きなリスクがあるのです。
検証:大雨警報は発表頻度が多い?
大雨警報が休校の判断基準から外されていることの最大の要因は「頻繁に発表されるから」ではないでしょうか?学校の責任者からもこのような話を聞いたことがあります。
しかし、本当にそうなのでしょうか?検証してみました。情報が公開されている2013年以降、東京都千代田区(気象台がある場所)にどれだけ警報が発表されたかを調べました。
その結果がこちらです。
年 | 大雨警報の発表回数 | 暴風警報の発表回数 |
---|---|---|
2013年 | 8回 | 2回 |
2014年 | 3回 | 2回 |
2015年 | 2回 | 0回 |
2016年 | 3回 | 1回 |
2017年 | 2回 | 1回 |
2018年 | 0回 | 3回 |
大雨警報の発表回数が徐々に減ってきているのは予測の精度が高まり、本当に危険な場所にだけ警報が発表されるようになったからです。
この中から台風による警報、学校の時間外に発表された警報、土日、長期休みを除いた結果がこちらです。
年 | 大雨警報の発表回数 |
---|---|
2013年 | 1回 |
2014年 | 0回 |
2015年 | 1回 |
2016年 | 0回 |
2017年 | 0回 |
2018年 | 0回 |
大雨警報を休校の目安にしたところで休校日数はほとんど変わらないことがわかりました。「大雨警報を基準にすると授業時間が確保できなくなる」というのは嘘です!
本来あるべき休校基準
それではどの段階で休校にするのがいいのでしょうか?いたって単純です。暴風警報だけでなく、大雨警報が発表されている時も休校にすればいいのです。大雨警報が出ている時は、重大な(人的被害が出るような)災害が発生するおそれがあります。
本来、外出は控えるべきです。特に子供が外に出ると人的被害が拡大するおそれがあります。自然を前に人間にできることはありません。ただ、危険を避けて、家の中でじっとしているしかありません。
中には「台風接近時の大雨警報では休校になるが、台風以外の時の大雨警報では平常通り」という学校もありますが、この判断基準は適切ではありません。台風が接近していても、していなくても大雨警報が発表される時は非常に危険な状態です。
台風接近時の大雨警報は、事前のある程度の予測ができるため、状況が悪化する前に早めに発表されます。一方、台風以外を要因とする大雨警報は、すでに状況が悪化している状況で発表されることも多くあります。つまり、台風以外を要因とする大雨警報は「本当に危険な状況になっている」ことを知らせる情報なのです。
大雨警報で休校になる地域もある?
東京や大阪、名古屋などの主要都市の多くの小中学校では、暴風警報のみが休校の判断基準となっていて、大雨警報では原則として平常通り授業が行われます。(※地域によっては休校となるところもあります。
一方、例えば兵庫県や奈良県などの大半の小中学校は大雨警報も休校の判断基準に組み込まれています。普通に考えて、これが最も適切な判断です。
まとめ
もし、休校になって「あまり降らなかったね」という話になっても、「何も起きなくてよかったね」と笑って過ごしてください。絶対に、「空振りだったから休校の基準を厳しくしたほうがいい」というようなことにならないようにしてください。稀に外れることもありますが、大雨警報が発表されている時は高確率で危険な状況です。
具体的にどの程度危険な状況なのかはこちらの記事「5段階の大雨警戒レベル「レベル5=手遅れ」あなたはどう行動すればいいのか?」 で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。