南海トラフ巨大地震は予知できるのか?地震予知の歴史と未来

2XXX年X月X日
「明日、南海トラフ巨大地震が発生します」今のうちに食料を買って、海の近くに住んでいる親戚を避難させて、今日は背の高い家具がない部屋で寝よう。

近い将来、こんな未来が待っているのでしょうか?多くの人が実現を待ちわびている“地震予知”ですが実際のところ地震予知は可能なのか?可能だとすればいつ実現できるのか?わかりやすく解説します。

 

東海地震は予知できる!はずだった

 小学生の頃、「もうすぐ東海地震が起きるので学校は休みになります」という内容の訓練をした人も多いのではないでしょうか?

 

そもそも東海地震とはなんでしょうか?東海地震は南海トラフの一番東の端、静岡県付近で発生すると想定されているマグニチュード8前後の巨大地震のことです。下の図の紫色の線で囲まれた部分が東海地震の震源域とされてきたところです。

f:id:kum-ilo-61:20190606131627p:plain

出典:気象庁|東海地震とは

ではなぜ、この地震だけ予知できると考えられるようになったのでしょうか?その理由は前回の南海トラフ巨大地震の際、東海地震の震源域だけずれ動かなかったからです。

f:id:kum-ilo-61:20190606131927p:plain

出典:気象庁|南海トラフ地震とは 

南海トラフでは1944年と1946年に立て続けに巨大地震が発生しました。しかし東海地震の震源域だけはずれ動かなかったため、東海地震が近いうちに起こると考えられるようになったのです。さらに東海地震が発生する直前には「スロースリップ」と呼ばれる揺れを感じない地震が発生するとも考えられていたため、その前兆を捉えるべく、数多くの地震計が設置されました。

 

狭い範囲で集中的に観測を行なっていたため、 前兆を確実に捉え、地震が発生する前に「地震予知」として発表することができると思われていました。

予知できなかった東日本大震災

ところが2011年3月、東北地方でマグニチュード9という未曾有の巨大地震が発生しました。この時、研究者たちは巨大地震の前兆をつかむことはできず地震予知は失敗しました。

 

その後、改めて地震予知の実現可能性が議論されるようになり、「今の技術での地震予知は不可能」という結論に至りました。これは東海地震も例外ではありません。実際、過去に東海地震を予知した実例もなく、全て憶測によって行われていた地震予知だったのです。さらに東海地震が単独で発生した例が1つもないことがわかり、次に起きる大地震は「東海地震」である、という根拠はなくなってしまったのです。

予知から予測へ

これまで数日以内に地震が起きることを伝える「地震予知」を目指して研究が進んできましたが、その実現が難しくなったことから、今では予知よりも予測に力を入れるようになってきました。「いつ・どこで・どれくらい」の地震が起きる、という予知ではなく、「いつ」はわからないが、「どこで・どれくらい」を予測しようという研究に舵を切ったのです。

 

「南海トラフでM8以上の地震が今後30年以内に70〜80%の確率で起きる」というが地震予測です。

f:id:kum-ilo-61:20190606133553p:plain

出典:気象庁|南海トラフ地震について 

南海トラフ臨時情報って何?

東海地震の予知は不可能という結論にはなりましたが、南海トラフ巨大地震の前兆を捉得ようという観測は今も続いています。その前兆が捉えられた時に発表されるのが「南海トラフに関連する情報」です。南海トラフの東西どちらかで巨大地震が発生した場合、想定震源域内でマグニチュード7クラスの地震が発生した場合、その他普段とは異なる地殻変動が観測された場合に発表されます。

南海トラフ巨大地震は予知出来るのか?

結論としては地震予知は不可能です。将来実現される可能性もありますが、今の技術では地震を予知することはできません。南海トラフ地震の臨時情報が発表されないまま南海トラフ巨大地震が発生する可能性もあります。今まで地震予知を前提とした防災訓練などもありましたが、今後は「突然やってくる巨大地震」に備えるしかありません!