南海トラフ臨時情報は信用できるのか?どんな時に発表されるのか?

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「南海トラフ巨大地震が発生する可能性が高まった」こんな情報が発表されることがあります。2017年秋から運用が始まった南海トラフ巨大地震の臨時情報で2019年の5月から発表の仕方が変わりました。この臨時情報、いったい何を基準に発表されているのか?この情報を信じていいのか?臨時情報が出たらどう行動すればいいのか?詳しく解説していきます。

 

「南海トラフ地震臨時情報」とは

南海トラフ巨大地震とは?

南海トラフ巨大地震とは静岡県から九州の沖にかけて位置する南海トラフで発生するマグニチュード8~9程度の巨大地震のことです。今後30年以内に70%~80%の確率で発生すると予測されています。最悪の場合静岡県から宮崎県までの広範囲が震度7の激しい揺れに襲われ、最大34mの津波が押し寄せるとも想定されています。死者は最大で23万人に上ると想定されていますが、この数字には震災関連死が含まれていないため死者は100万人を超えるのではないかといった指摘も出ています。

地震予知なのか?

南海トラフ巨大地震の臨時情報は南海トラフの発生が近づいていることを知らせる情報ですが残念ながら地震予知ではありません。地震予知は①いつ②どこで③どれくらいの地震が起きるかを科学的根拠に基づいて発表するものですが、「南海トラフ巨大地震の臨時情報」は具体的にいつ地震が発生するかを特定したものではありません。臨時情報が出ても巨大地震が発生しない可能性もありますし、臨時情報が発表されないまま突然、巨大地震が発生することもあります。

地震予知について詳しく知りたい方はこちらの記事「【南海トラフ】地震予知の定義 これを知っていればデマに惑わされない!」をご覧下さい。地震予知の定義についてわかりやすく解説しています。

臨時情報が発表されるケース

その1:M8以上の地震が発生

南海トラフでは最大でM9.1の巨大地震が発生すると想定されていますが、毎回M9の巨大地震が発生するわけではありません。M8クラスの地震が時間をおいて立て続けに起こることもあります。

昭和の南海トラフ巨大地震でも東側でM7.9の地震が発生した2年後に西側でM8.0の地震が発生しました。

その1つ前の南海トラフ巨大地震、安政の南海トラフ巨大地震では東側でM8.4の地震が発生したわずか32時間後に西側でM8.4の巨大地震が発生しました。

このような過去の経験から南海トラフでマグニチュード8程度以上の巨大地震が発生した場合は続けて続けて巨大地震が発生する確率が高いと考えられているのです。そのため南海トラフ巨大地震の臨時情報を発表して警戒を呼びかけます。

その2:M7以上の地震が発生

南海トラフ巨大地震の想定震源域内でM7.0以上の地震が発生した場合も南海トラフ巨大地震の臨時情報が発表されます。南海トラフ巨大地震の前にマグニチュード7クラスの前震が発生した事例はこれまで確認されていませんが、2011年3月11日に発生し東日本大震災をもたらした東北地方太平洋沖地震(M9.0)では2日前の3月9日にほぼ同じ場所でM7.3の大きな前震が発生していました。この経験からマグニチュード7程度以上(誤差も考慮してM6.8から調査開始)の地震が発生した場合、南海トラフ巨大地震の臨時情報が発表されます。

その3:スロースリップが発生

 プレートの境界では人が揺れを感じる地震とは別に、人が揺れを感じない種類の地震も発生しています。それがスロースリップ(ゆっくりすべり・ゆっくり地震)と呼ばれるものです。このスロースリップも2011年に東北沖で巨大地震が発生する数か月間から発生していたことがわかっています。スロースリップをもとに巨大地震がどれだけ迫っているかを具体的に予測することはできませんが、普段と明らかに違う動きを観測した場合には南海トラフ巨大地震の臨時情報が発表されます。

南海トラフ地震に関する情報の種類

 南海トラフ巨大地震の臨時情報には大きく分けて2つの種類があります。「南海トラフ地震臨時情報」と「南海トラフ地震関連解説情報」です。

南海トラフ地震臨時情報

 「南海トラフ地震臨時情報」は次のような場合に発表されます。

  • 上記の3つのケースによって南海トラフ巨大地震との関連を調査を開始した時
  • 南海トラフ巨大地震との関連についての調査を継続している時
  • 異常な現象の調査結果を発表する時

この3通りの発表の仕方があります。わかりやすくまとめると南海トラフで何か異常があった時に、「いつもと様子が違うので南海トラフ巨大地震に結びつくか調査しますよ」という情報です。

南海トラフ地震関連解説情報

「南海トラフ地震関連解説情報」は次のような場合に発表されます。

  • 異常な現象の調査結果を発表した後の状況の推移を発表する時
  • 「南海トラフ沿いの地震に関する評価化検討会」の定例会合における調査結果を発表する時

1つ目は 「南海トラフ地震臨時情報」の続報として発表されるものです。2つ目は実は毎月発表されています。ただしほぼ毎回内容は同じで、たいてい「現在のところ、南海トラフ沿いの大規模地震の発生の可能性が平常時と比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていません。」と発表されます。

南海トラフ地震臨時情報の種類

南海トラフ巨大地震の臨時情報は大きく2つに分けられると解説しましたが、 「南海トラフ地震臨時情報」はさらに4つに分けられています。これらの情報は「南海トラフ地震臨時情報(〇〇)」と発表されます。

調査中

「南海トラフ地震臨時情報(調査中)」は以下の3つのケースで臨時の「南海トラフ沿いの地震に関する評価化検討会」を開催する場合に発表されます。

  • 南海トラフ巨大地震の震源域内とその周辺でマグニチュード6.8以上の地震が発生
  • 通常とは異なるスロースリップが発生した可能性がある
  • その他、プレートの境界面で通常と異なる動きを観測し、調査が必要と判断

この情報が発表された時はまだ、南海トラフ巨大地震とのどのような関連があるかはわかりません。

巨大地震警戒

「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)」は南海トラフ巨大地震の想定震源域内でマグニチュード8以上の地震が発生した場合に連動して発生するもう一つの巨大地震への警戒を呼び掛けるときに発表されます。この情報が発表された時は、巨大地震の発生の可能性が普段よりかなり高まっていると考えられます。

巨大地震注意

「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」は南海トラフ巨大地震の想定震源域内でマグニチュード7以上8未満の地震が発生した時に、または通常とは異なるスロースリップが発生したと判断された時に発表されます。この情報は「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)」よりは信頼度が落ちますが、東日本大震災を教訓に発表されることになりました。

調査終了

「南海トラフ地震臨時情報(調査中)」が発表される目安となる3つのケースが発生したが、調査した結果「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)」と「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」のどちらにも当てはまらにと判断された場合に発表されます。

私たちはどうすればいいの?

皆さんがもっとも気になることは、臨時情報が発表された時にどう行動すればいいか?ですよね。2つのケースに分けて解説します。

巨大地震警戒が発表された時

「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)」が発表された時、国が公表しているガイドラインは「地震が発生した時に津波からの避難が明らかに間に合わない地域の住民は事前に避難する」としています。

具体的には「地震発生から30分以内に、津波で30㎝以上浸水する地域」の人が避難する必要があります。しかし、この地域の全員が避難するか、高齢者のみが避難するかはそれぞれの地域の応じて判断します。この情報が発表された時の避難期間は「1週間」です。

また、危険物を扱う会社や施設は火災を防ぐための点検を行わなければいけません。そのほか、従業員に明らかに危険が及ぶと考えられる場合は、それを避ける対策を取らなければいけません。

巨大地震注意が発表された時

「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発表された時、国は「日ごろからの備えを再確認し、必要に応じて避難する」としています。「巨大地震警戒」に比べると日常生活への支障は少なそうですが、家具を固定するなど改めて巨大地震に備えるきっかけとなります。

どれくらい信用できる?

正直、この情報に頼ることは「命取り」です。なぜなら、南海トラフ巨大地震の発生を事前に予測した実例はまだないからです。南海トラフ巨大地震の臨時情報はあくまで人間が考えた憶測にすぎません。臨時情報が発表されても巨大地震が発生しないケースや、臨時情報が発表されないまま巨大地震が発生するケースも考えられます。

南海トラフ巨大地震が発生するときは事前に情報が出ると思い込むことなく、いつ地震が来てもいいように家具を固定し、水や食料を備蓄してください。