ホテル大火災 生死を分けた正常性バイアス「自分だけは大丈夫」

大雨のニュースを見ているとき、避難勧告が出たとき、津波警報が出たとき、あなたはどう行動していますか?何もしていないという人が多いのではないでしょうか?いつのまにか「自分は関係ない」と思い込んでいるはずです。

 

この状況、実は

正常性バイアス

と呼ばれる極めて危険な心理状態なんです!

 

正常性バイアスとは、自分の身に危険が迫っているときに無意識のうちに「自分だけは大丈夫」「自分は関係ない」と思い込んでしまう人間の心理状態のことです。

 

 

何も知らないと、あなたも命を落としてしまうかもしれません。正常性バイアスが生死を分けた実例を紹介します。

 

 

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川治プリンスホテル雅苑とは

※川治プリンスホテルは西武系列の「プリンスホテル」とは無関係の個人経営のホテルです。

1980年11月20日午後3時すぎ、栃木県の藤原町(現・日光市)にあった「川治プリンスホテル雅苑」で大規模な火災が発生しました。露天風呂の解体工事中に何らかの理由でガスバーナーの火花が木造の建物に燃え移ったとみられています。消防用設備と防火管理体制の不備、さらに適切な避難誘導がされなかったこと、通路が入り組んでいてで口がわかりづらかったことなど、複数の要因が重なり死者45人という史上最悪のホテル火災となりました。

被害を拡大させたアナウンス

この火災で被害が拡大した最大の理由は火災報知器が鳴り響いた直後にあった管内アナウンスでした。

 

このアナウンスの内容は

「ただいまのベルは点検によるものですからご安心ください」

というものでした。

 

なぜ、このような放送があったのでしょうか?

実は、この日の午前中に火災報知器の点検や一部の工事が行われていたため、従業員が現場を確認せず誤報と決めつけ館内放送をしてしまったのです。この放送を鵜呑みにした一部の宿泊客が逃げ遅れ、被害が拡大しました。火災報知器が鳴った場合、現場を確認することが義務付けられていますが、この確認作業を怠った結果、消防への通報も大幅に遅れ、消防が到着したころには宿泊客の救出が困難な状況になってしまっていました。

 

生死を分けた2つのグループ

この日、川治プリンスホテル雅苑には2つの老人会が宿泊していました。片方の老人会は3階に、もう片方の老人会は4階に宿泊していました。そして、この2つのグループの対応が生死を分けました。

4階に宿泊していたグループ

宿泊客の死者40人のうち9割にあたる36人が4階に宿泊していた人たちでした。この階の人たちは「ただいまのベルは点検によるものですからご安心ください」というアナウンスを鵜呑みにし、自分たちで状況を確認することもせず、部屋でくつろいでいたと言います。その結果、火災に気づいたときにはすでに廊下や階段が炎と煙に包まれていました。中には椅子に座ってくつろいだ姿勢で亡くなっていた人もいました。

3階に宿泊していたグループ

一方、3階に宿泊していたグループは別の行動をとりました。最初にベルが鳴った時、1人の宿泊客がすぐに廊下や階段の様子を見に行きました。その後、「ただいまのベルは点検によるものですからご安心ください」というアナウンスが流れましたが、様子を見てきた人が「様子がおかしい、とりあえず避難しよう」と同じ階の部屋の宿泊客に避難を呼びかけました。この時、すでに3階にも煙が充満していましたが、何とか脱出することができました。

 

「まさか」と思い、館内放送を鵜呑みにしたグループでは多くの犠牲者が出た一方、「もしかして」「念のため」と避難したグループは無事避難することができました。

 

まとめ

皆さんも「まさか自分が」と思ったことがあると思います。その時、「念のため」周りの様子を確認する、これだけで最悪の結果だけは免れることができると思います。少しでも不安になったら、あなたが率先して“念のため避難”してください。

 

 

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