2018年9月6日に北海道で発生したM6.7、最大震度7の地震が「北海道胆振東部地震」名づけられました。しかし、この名前「分かりにくい」「もっと簡単な名前にならなかったの?」と思っている人もいるかもしれません。他にも「なぜ大震災じゃないのか」といった声も聞かれます。
なぜこんな分かりにくい名前がついたのか、「命名のルール」を整理してみると、その理由がわかってきます。今回は「地震の名前」に注目してみましょう。
命名された地震一覧
まずは名前がついている地震一覧です。
2018年9月6日 | 平成30年北海道胆振東部地震 |
2016年4月14日 | 平成28年熊本地震 |
2011年3月11日 | 平成23年東北地方太平洋沖地震 |
2008年6月14日 | 平成20年岩手・宮城内陸地震 |
2007年7月16日 | 平成19年新潟県中越沖地震 |
2007年3月25日 | 平成19年能登半島地震 |
2004年10月23日 | 平成16年新潟県中越地震 |
2003年9月26日 | 平成15年十勝沖地震 |
2001年3月24日 | 平成13年芸予地震 |
2000年10月6日 | 平成12年鳥取県西部地震 |
1995年1月17日 | 平成7年兵庫県南部地震 |
1994年12月28日 | 平成6年三陸はるか沖地震 |
1994年10月4日 | 平成6年北海道東方沖地震 |
1993年7月12日 | 平成5年北海道南西沖地震 |
1993年1月15日 | 平成5年釧路沖地震 |
1984年9月14日 | 昭和59年長野県西部地震 |
1983年5月26日 | 昭和58年日本海中部地震 |
1982年3月21日 | 昭和57年浦河沖地震 |
1978年6月12日 | 1978年宮城県沖地震 |
1978年1月14日 | 1978年伊豆大島近海の地震 |
1974年5月9日 | 1974年伊豆半島沖地震 |
1973年6月17日 | 1973年6月17日根室半島沖地震 |
1972年12月4日 | 1972年12月4日八丈島東方沖地震 |
1968年5月16日 | 1968年十勝沖地震 |
1968年4月1日 | 1968年日向灘地震 |
1968年2月21日 | えびの地震 |
1965年8月3日 - 1970年6月5日 | 松代群発地震 |
1964年6月16日 | 新潟地震 |
1963年3月27日 | 越前岬沖地震 |
1962年4月30日 | 宮城県北部地震 |
1961年8月19日 | 北美濃地震 |
「思ったより数が多い」という話は置いておいて特に最近の地震の名前に規則性があることにお気づきでしょうか?
分かりましたか?
年号+地域名+地震
というルールに基づいています。
昔は命名に明確な基準がなかったため、年号が入っていない地震もありますが、最近はこのルールに基づいています。
そして重要なのが
気象庁が「地震という自然現象」に命名
しているということです。ちょっと覚えておいてください。
ここに具体的な命名のルールを書いておきます。
気象庁による地震への命名基準
(ア)地震の規模が大きい場合
陸域: M7.0以上(深さ100 km以浅)かつ最大震度5強以上
海域: M7.5以上(深さ100 km以浅)であり、かつ最大震度5強以上または津波の高さ2 m以上
(イ)顕著な被害が発生した場合(全壊家屋100棟程度以上の家屋被害、相当の人的被害など)
(ウ)群発地震で被害が大きかった場合等気象庁「顕著な災害を起こした自然現象の名称について」より
上記のうち1つ以上を満たすものについて次のようなルールに基づいて命名されます。
原則として、「元号年+地震情報に用いる地域名+地震」とします。
なお、定めた名称は、一連の地震活動全体を指します。また、アの基準を満たす地震が複数発生した場合には、原則として一連の地震活動が始まった時点の元号年を用います。気象庁「顕著な災害を起こした自然現象の名称について」より
例えば2018年6月18日に大阪府で起きた最大震度6弱の地震はこの基準を満たしていないため命名されませんでした。
しかし先ほどから「東日本大震災は?」「阪神淡路大震災は?」と思っている人もいると思います。ここからは「大震災」という名前について書いていきます。
大震災とは?
ここまで
気象庁が「地震という自然現象」に命名
していることをお話してきました。
2011年3月11日に東北・関東地方を襲った巨大地震は「平成23年東北地方太平洋沖地震」、1995年1月17日に兵庫県を襲った地震は「平成7年兵庫県南部地震」と命名されています。
では「東日本大震災」「阪神淡路大震災」とは一体何なのでしょうか?
これは
政府が「災害」に命名
したものです。
大震災とは「地震による大災害」を示すもので、政府が「地震」に命名しているものとは別物です。よく混同している人がいますが、この機会に整理してみてください。
それではどんな時に政府が「大震災」と命名するのでしょうか?北海道胆振東部地震や熊本地震は「大震災」とは命名されませんでした。命名基準を見ていきましょう。
政府による「大震災」命名基準
気象庁の地震に対する命名と違ってこちらには明確な基準はありません。一般に「国難」に陥った時に命名されるといわれていて、基本的には政府が閣議決定し、歴史上、行政上の正式名称となります。
これまで大震災と命名されたのは
東日本大震災
阪神淡路大震災
関東大震災
の3つだけです。
いかがだったでしょうか?
「地震」と「大震災」を区別して考えることができるようになったと思います。最後に以前Twitterに掲載した画像を載せておきます。
【地震の名前が分かりにくい?】
— 人が死なない防災(kum-ilo-61) (@kum_ilo_61) 2018年9月6日
今日の震度7の地震が「平成30年北海道胆振東部地震」と命名されましたが、これは気象庁が「地震」に対して「年号+震央地名+地震」というルールに基づいて命名したものです。これとは別に政府が「災害」に対して「東日本大震災」などと名称をつけることがあります。 pic.twitter.com/LJj204FiHp